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2014.08.25 Monday
おがっちの「島根学講座!みたいな!」
このコーナーは、みんなで島根のことをいろいろ勉強していこう!というものです。
今回の担当は、リンリンさん。
・「鏝絵(こてえ)」について。
「鏝絵」というのは、左官職人が建物の壁を塗る時に使う「鏝」という道具を使って、家やお寺の壁に、漆喰で作った装飾、立体の絵のことです。
鏝絵は、江戸時代前半に本業の壁塗り作業が終わった後、施主への感謝の意味を込めて左官職人が壁に鏝で絵を描いたのが始まりです。
江戸時代中期には、幕府が防火対策として漆喰の塗り壁を奨励したことから全国に広がりました。
明治時代に入ると洋風建築が盛んになり、室内装飾をより豊かにするため、左官技術はより高度なものになりました。
鏝絵も芸術性の高いものからユニークなものまでさまざまな図柄が作られるようになったんです。
特に、「石州左官」と呼ばれた、島根県西部・石見地方の左官職人の技術は、際立って優れており、日本はもちろん、海外でも活躍していました。
当時石見地方は出稼ぎで働く人が多く、少しでも多くの収入を得ようと、競い合って左官の腕を磨いた結果と言われています。
国会議事堂・最高裁判所、帝国ホテルなど、現存する有名な建物のほとんどが、「石州左官」の手によるものなのです。
鏝絵は全国で見られますが、県内には300点以上あり、中でも石見地方の鏝絵は、その質・量共に、群を抜いています。
特に大田市・益田市には、それぞれ百ヶ所を超す鏝絵があります。
大田市では、民家の壁を飾るというよりも、寺や神社に奉納されたものが多く、デザインも「龍」「鳳凰」「恵比寿」「大黒」など多種多様で、精緻で技巧的で大型の作品が多いです。
益田市では、「鶴」「亀」「鯉」など、漆喰の白を多用し、ラインが美しいものが多いです。
また、海岸部では、色を混ぜた色漆喰を多用し、カラフルで個性的な表情の「恵比寿」「大黒」なども見られます。
いくつかご紹介すると、まずは、大田市の西性寺(さいしょうじ)の「鳳凰」。
これは、大正時代の鏝絵で、「左官の神様」と尊敬された松浦栄吉さんの作品です。
空に羽ばたく「鳳凰」のダイナミックな姿が彫刻されています。
羽の端にはガラス玉が埋め込まれ、制作当時はキラキラとまばゆいばかりだったそうです。
それから、大田市の西往寺(さいおうじ)の「双龍」。
石見の鏝絵は、絵柄が豊富で40種を超えますが、最も多いのが「龍」のデザインです。その中でも、この雄、雌の2頭の龍を描いた西往寺の「双龍」はピカ一です。
幅3.8m、高さ1.2mの大きさで、背景の青色が今も鮮やかで、細部まで工夫が凝らされ、2頭の龍が今にも飛び出してきそうな迫力です。
どうやったら鏝でこんなに繊細な造形ができるのかと不思議になります。
「双龍」の右には、歌舞伎などで知られる娘道成寺のクライマックスシーンを再現した「安珍清姫(あんちんきよひめ)」が並んでいます。
旅の僧・安珍に裏切られた清姫が大蛇に変身して、鐘の中に隠れた安珍を鐘ごと炎で焼きつくすというすさまじい場面が立体的に描かれています。
県内には、ほかにも、面白い鏝絵がたくさんありますので、探してみてくださいね。石州左官たちの熱き想いと気高い職人魂を感じながら、鏝絵巡りをするのも、楽しいのではないでしょうか。
・今回の曲
「銀の龍の背に乗って」中島みゆき
次回は、9月12日です。
http://fm-sanin.co.jp/retoro/index.php?e=957
おがっちの島根歴史学講座!みたいな! 02:06 AM comments (x) trackback (x)